テキストマイニングの手法
KMとテキストマイニング
1)KMは情報&知識の量産手法
前述までに、テキストマイニングの実務的手法について解説したので、 ここではKMの本来の活動とテキストマイニングとの関連について述べたい。 まず、KMへの取り組みは米国と日本とで大きく異なっている。(図1-14:ナレッジマネジメントへの展開) 日本では形式知の活用(=既に存在する知識(=報告書)の共有と有効活用)が主体となっており、 KMでの検索機能が重要視されてきた。これに対し、米国では暗黙知から形式知への知識創造に重点が置かれ、 暗黙知を持つ人材の評価や人材間の交流を促進するマネジメントが主流となっている。この様な観点から見ると、 テキストマイニングは膨大な顧客情報から様々なレポーティングを可能とする事から、 知識創造を支援する技術であると言える。
2)データ、情報、知識への変換:ツール無しでは実現できない。
先に事例として紹介したキヤノン(株)の様な顧客情報の活用を実現するには、大量のテキストデータを迅速かつ的確に、 しかも効率的に分析し、報告書にまとめて多数の関係者に開示する必要がある。(図1-15:データ、情報、知識への変換) つまり、大量のクレームがRDBやExcel等に格納されていても、そのサンプルを読むだけでは何の判断も下す事ができない様に、 データが蓄積されているだけでは誰も利用できない。こうしたデータは、月報レポートとしてある観点の下に整理・分類される事で、 初めて利用・共有が可能になるのであり、しかもこの分析作業がスピーディに実施できなければビジネス現場では役に立たない。 このためには分析支援ツールが不可欠であり、それをサポートするのがテキストマイニング技術である。 ここで、テキスト情報では数値データと異なり、その多義性により様々な観点での分析が可能となる点が要注意である。 つまり、観点が異なれば分析結果は違ってくるが、それらはいずれも正しく、様々な異論をぶつけ合い仮説検証を行なう事が、 情報を知識へと昇華する事につながって行く。このために、こうした議論を活性化するマネジメントが重要となってくるのである。
3)知識の量産手法
前述のプロセスを知識の量産手法として、表現を変えたものを図1-16に示す。(図1-16:知識の量産手法)。 KMの本来の目的は「如何に大量の知識を量産できたか?」にあるはずであり、そのためには前身となる情報の大量生産が不可欠となり、 ツールによる支援なしには実現困難となっている。(勿論、知識や情報の評価は、単に量だけでなく、そのレベルも評価される必要がある) この活動のポイントは少数の専門家だけが分析するのではなく、組織内の全員が独自の観点で多岐に渡る分析をする事で、 情報や知識の量産を目指す事である。
(2019.05.07 公開)
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