自社の膨大なデータを分析する際に「まずはプライオリティの高い所から…」と考えて、苦情問合せから着手する企業は珍しくありません。
勿論それは妥当な判断ではあるのですが、苦情だけを分析して「課題抽出が十分できている」と考えるのは早計と言えるでしょう。
今回は苦情と要望の性質を踏まえ、お客様の本当のニーズを探し出す手法についてご説明します。
「苦情」と「要望」とはそもそも何か
まずは苦情と要望がどのような性質を持つかを考えます。
苦情とはすなわち、既に問題が生じており、それに対してお客様が(時には強い語調で)指摘を行っている状態となります。
この時の問題とは、不具合やエラーなどの異常事態、サービスや製品の不足、およびそれらが改善されていない状況と考えられます。
では、要望とはどのような状態でしょうか?
要望という言葉の意味は「これをして欲しいと実現を望むこと、期待すること」となります。
つまり裏を返せば、企業が提供する製品やサービスに「今は実現していない、存在していないものがある」ことを示しています。
苦情は最初から苦情なのか?
次に、「苦情は突如現れるのか?予備動作があるのか?」を考えます。
不具合やエラーについては予測ができないものであり、生活や仕事に支障をきたすため、突如として発生する上に必ず苦情となるものでしょう。
サービスや製品は実際に利用した時に問題が発覚し、問題の度合いや状況によって苦情に発展します。
例えば「店舗での購入時に十分な説明がなかった」ために求める性能と違う商品を購入してしまった場合、以下のような行動パターンが考えられます。
① もう少し説明が欲しかったと感じるが、きちんと質問しなかった自分の責任もあると考える
② もう少し説明が欲しかったと感じ、商品は使い続けるが今後改善してほしいと思う
③ 説明不足が原因で誤った判断をしたと感じ、商品の交換を願い出る
④ 不信感を感じ、この店では二度と買わない
① ~②は「今は十分な説明が“実現していない”」ため改善要望を抱いている状態であり、③は「今すぐ対応してほしいと”望んでいる”」状態、④は苦情となっている状態と言えます。
また、①②については何度も繰り返されれば不満が蓄積され苦情となり、③についても望んだ対応が得られなければ、すぐさま苦情に発展するでしょう。
また、これらの行動は購入者の性格だけでなく、「自分用に買った/プレゼント用に買った」、「なんとなく買った/必要に迫られて買った」などの状況によっても左右されます。
同じ問題が生じても苦情となるか、要望という形を取るかは一定ではなく、要望から苦情に育ってしまうケースも少なくありません。
全ての要望が苦情となる訳ではありませんが、苦情とは氷山の一角であり、その予備動作として要望が生じていると考えるのがリスク対策としては安全でしょう。
本当のニーズはごちゃまぜ分析で明らかにする
前述の通り、要望は苦情予備軍であり、既に苦情になってしまった話題だけを分析しても根本的な解決とはなり得ません。
だからと言って要望だけを分析するのもまた効率的とは言えません。
何故ならば、要望だけでは「どれが苦情に発展する危険性があるか」の判断がしにくく、せっかく見つけた課題の優先順位付けが難しくなってしまいます。
そのため、お客様の本当のニーズを効率的に発見するためには、苦情と要望をごちゃまぜにしたデータで分析を行うべきでしょう。
苦情だけでは背景がはっきりしない話題でも、苦情より母数が多い要望から状況を補足して捉える事ができます。
更に時系列などの情報を参考とできるのであれば、例えばひとつの話題がどの段階まで要望ベースで語られ、いつの時点で苦情化してしまったのかを可視化することも可能です。
また、苦情となりやすい要望の傾向を知ることができれば、苦情に発展していない要望の時点で「これは苦情になる可能性が高い」と予測し、早い段階で対策を練ることも難しくありません。
苦情と要望は別個のものと考えず、「一繋ぎの宝(=課題の源泉)」として扱うことで、本質的な課題解決につなげることができます。
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